2008年4月25日金曜日

おざなりvsなおざり

これまたびっくりしました。YOMIURI ONLINEの「米大統領選 おざなりにされる政策論争(4月24日付・読売社説)」です。曰く

指名に必要な代議員の争奪戦が過熱するに連れ、政策論争はほとんど棚上げされ、中傷合戦がエスカレートしている。

また

民主党に物足りないのは、外交・安全保障政策で十分な説明がないことだ。指名争いが終われば、共和党との本格的な政策論争が待っている。

つまり「民主党の両候補は中傷合戦ばかりで政策論争などろくすっぽやっていない」という趣旨のようです。が、それであれば見出しの「おざなり」は本来「なおざり」であるべきなのではないでしょうか。

検索してみたところ、goo辞書には

おざなり その場逃れにいいかげんな言動をする・こと(さま)。
なおざり (1)真剣でないこと。いいかげんにして、放っておくこと。また、そのさま。
((2)は省略)

とあります。

もしオバマ対クリントンの政策論争が「おざなり」なのだとしたら、仮にそれが実は単なるポーズとか時間かせぎとか何かのカムフラージュにすぎないものであったとしたにせよ、まがりなりにも政策論争が現におこなわれていることになってしまいます。

また、そうした「おざなり」な営為、外面をとりつくろうような作業が、その執務のほとんどを占めているような政治家というのも、決して少なくはないでしょう。

が、この社説によれば、今のところ両候補は中傷合戦に専念しているようです。ということは、そこには真剣な政策論争もないのでしょうが、その代わり「おざなり」な政策論争といったものもありえません。

中傷合戦にかまけて政策論争がおこなわれていない、このことを指すには「政策論争がなおざりにされている」というのが正しいはずです。いざ中傷合戦に決着がつき政策論争が始まったとき、ではその論争が真剣なものになるのか「おざなり」にすぎないものになるのか、それはまた別の次元の問題でしょう。

2008年4月17日木曜日

よくあるよくない日本語の典型

NIKKEI NETのとあるコラムの見出し「好ましくない弱い金融機関の延命」というのが気になったので、いくつかの検索サイトの翻訳ツールで

  1. この見出しを日本語から英語に翻訳
  2. 上の結果を同じツールで日本語に翻訳

してみました。

英語翻訳 - エキサイト 翻訳
原文 好ましくない弱い金融機関の延命
日→英 Life prolongment of undesirable, weak financial institution
英→日 望ましくなくて、弱い金融機関の人生長期化
Yahoo!翻訳 - テキスト翻訳
原文 好ましくない弱い金融機関の延命
日→英 The prolongation of human life of an unfavorable weak financial institution
英→日 好ましからぬ弱い金融機関の人の生命の延長

まあ、ふつうこうなってもおかしくはないと思うんですわ。

ところがGoogleではなんと。

Google 翻訳
原文 好ましくない弱い金融機関の延命
日→英 Weak financial institutions unwanted life-sustaining
英→日 弱い金融機関の不要な延命

「金融機関」にかかるのは「弱い」だけであり、「好ましくない」は「弱い金融機関の延命」全体に(したがって最終的には「延命」に)かかっている、ということまでちゃんと解析されている。

Googleすげー。っていうか、むしろ過保護です。

2008年4月11日金曜日

ボイラープレート

Distinctive Features Of SQLite」によればSQLiteの特長のひとつとして「Readable source code」つまりソースコードが読みやすく書かれてあって関数や変数に対するコメントも役に立つ内容のものになっているということがあるそうですが、その最後に

Boilerplate commenting is omitted.

とあり、この"boilerplate"というのがわからなかったので辞書をひきました。

ボイラーという響きから、グツグツ煮えたぎった感じ、グダグダ長々と書いてあるけど何が言いたいんだか結局わからないようなコメント。そんな予想をしてたんですが。

最初にためしたgoo 辞書の英和辞典ではひっかからず。

次にYahoo!辞書で"boilerplate"を検索したところ「画一的な言葉」と出てきました。なるほど。

たしかに

/**
 * hogeNameを取得する。
 * @retrun hogeName
 */
public String getHogeName()
{
    return this.hogeName;
}
とかって(まぁSQLiteはJavaじゃないけど)無茶苦茶ありがちですな。いわば同義反復の嵐。

で、SQLiteのソースコードではそういうおざなりなコメントはバッサリ斬り捨ててありますよと。

2008年4月10日木曜日

誤訳 in 『Java 暗号化アーキテクチャー (JCA)』

「コアクラスとインタフェース」の3段落目。

この項では、各クラスおよびインタフェースのメインメソッドの署名を示します。

英語版の該当箇所は

This section shows the signatures of the main methods in each class and interface.

たしかに電子署名などを実現するためのJavaでのしくみを解説した文書ではありますが、"signature"ならなんでもかんでも「署名」としてしまえばいいというもんでもないでしょう。機械的翻訳の弊害でしょうか?

誤訳 in 『Java SE 6 用 JSSE リファレンスガイド』

「Secure Sockets Layer (SSL) プロトコルの概要」→「SSLのしくみ」→「暗号化処理」→「公開鍵暗号方式」の4段落目。

公開鍵暗号方式は、データの暗号化と復号化に同じ鍵を使用するので、非対称暗号化方式とも呼ばれます。

英語版の該当箇所は

Public key cryptography is also called asymmetric cryptography because different keys are used to encrypt and decrypt the data.

まるで逆です。1つ上の「秘密鍵暗号方式」の同じく第4段落をコピペしてきて直し忘れたまま提出されてしまったのでしょうか?