2008年7月13日日曜日

翻訳家だからってすべてのニュアンスを訳しきれるというわけじゃないんです

山口雅也=編『山口雅也の本格ミステリ・アンソロジー』(角川文庫)所収のアーサー・ポージス「イギリス寒村の謎」(風見潤=訳)。

連続殺人事件の発生した小さな村について、警部は素人探偵に向かって以下のように説明します。

人口は全部で十四人。いや、いまは十五人です。ウィロウ夫人という御婦人が三週間前に引っ越してきましたからね。誰だって村の人口を七パーセント以上増加させることができるというわけじゃないんです

最後の訳はまるでわけがわかりません。

原文は見てないので推測の域を出ませんが、直前までのセリフから考えて「14人から15人に増えたことによって、これ以降もはや誰も村の人口を7パーセント以上増やすことはできなくなった」という意味なんじゃないですかね。

(念のため書いとくと15人目のウィロウ夫人の転入で村の人口は 1÷14×100=7.14% の増加、でもその次に誰か越してくる人がいたとしてもそれによる人口増は 1÷15×100=6.67% にしかならない)

14人が15人に増えたところで、ちっぽけな村であることに変わりはない。でもそこに7%という境目を設けてみると、あたかも劇的な変化であったかのように言いあらわすことができる。そういうユーモアを意図したレトリックだと思うんですけど。

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