2008年5月6日火曜日

一人称

ZDNet Japanに「マイクロソフトのYahoo買収断念は賢明な判断」という翻訳記事があって、内容には特に異論はないのですが、文中2度しか使われていない一人称が

前半では

筆者はどうかって?これはMicrosoftが成しうる最も賢明な動きであったとみている。

後半では

最初からずっと、小生をはじめとする多くのMicrosoftウォッチャーが、MicrosoftとYahooの間には重複する点が多すぎると指摘していた。

となっていて、なぜわざわざ使い分けてるのだろうと疑問に思いました。

これが日本人の日常会話や、あるいは会話じゃなくても小説や芝居の登場人物のセリフとかエンタテインメントとしてのエッセイやコラムの中であれば、文脈に応じて一人称がコロコロ切り替わってもおかしくはないと思います。

が、報道や論評においてそれはどうなのか。しかもよく見るとこの記事の原文執筆者は Mary Jo Foley という名前になっていて、どうやら女性のようです。女性の一人称として「小生」というのも、ちょっとどうなんでしょう。

どうにも落ち着かないので原文にあたってみました。

前半の「筆者はどうかって?」を含む一節は

Me? I see this as the smartest thing Microsoft could do.

そして後半の「小生をはじめとする」を含む一節は

All along, many Microsoft watchers, including yours truly, have noted that there was an awful lot of overlap between Microsoft and Yahoo.

となっています。

Google 翻訳によれば「including yours truly」は「小生を含む」の意。なるほどここでの yours は手紙なんかで使われる Sincerely yours の yours と同じなわけですね。

そのまま書くとエラソーに見えてしまうので、ちょっとオブラートに包んで表現してる感じ。「もちろん読者の皆さんも同じでしょうが、実はわたくしも~」みたいな。

だからっつってモロ「小生」じゃ、なんかぎこちなくないですかね。記事の文脈で言えば「~と、多くのウォッチャーが指摘していましたし、誠に僭越ながら筆者もそう指摘してきました」といったあたりが妥当なのではないでしょうか?

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